今日空を見ましたか。どんな空でしたか。雲はどんな形をしていましたか。空はいつでも私たちの頭の上にありますが、この質問に答えられる人はあまり多くありません。空を見ずに、いつも前や下ばかりを見て歩いているのです。
空を意識することで、ストレスにさらされている自分の状況をより大きな文脈で捉えることができます。また、空の変化を見ることで、自分の感情も同じように変化するものだということに気付くことができます。そして、嵐はいつか過ぎ去り、雲の上に広がっている青空のような感情が再び戻ってくると思えるようになるのです。これは、人間の精神的な健康と環境とのつながりを研究する新しい分野「生態心理学」の専門家サラ・A・コン博士の考えです。
また、神経科学者のフレッド・プレヴィック博士は、視野と脳との研究から次のような指摘をしています。視野には自分の身体やその周辺を把握する下半視野と空や地平線といった遠い場所を把握する上半視野があります。上半視野は特に人間において発達しており、上半視野をつかさどる脳の領域は、瞑想や夢を見ているとき、また芸術や創作活動をしているときに活性化することがわかっています。このことから、空や地平線のような遠くの景色を見ることは人間の感覚に影響を与え、思考パターンや気分を変える可能性があると考えられます。
空を見上げて気分を変える方法
ただ空を見るだけではストレス解消にはならないという人もいると思います。コン博士は、そのような人は頭の中での考え事が止まっていないので、五感を使うことをすすめています。
雲の流れを見て、空気を味わい、風を感じ、木に触れる。同じ場所を何度も歩いて、そこで起きている小さな変化に意識を向けてみるのです。そうすることでストレスが体の中から抜け出て心地よさを感じることができるようになります。
また、空を見上げることの素晴らしさを伝えているNPO法人「For Spacious Skies(広々とした空)」の創設者であるジャック・ボーデン氏は、空を見ることで思考のパターンを変えるこんなエクササイズをすすめています。
例えば、ごみ捨て場の近くを歩いていたとしましょう。あふれているごみを見て嫌な気持ちになってしまいました。そんなときは、ごみをしっかり見た後で、空を見上げてみてください。美しい空を見ていると、ごみ捨て場が気にならなくなってきます。次に少し目線を下げて、空とごみ捨て場の両方が見えるようにしてみてください。すると、先ほどは視界の100%をごみ捨て場が占めていましたが、今では20%だけになり、残りの80%は美しい空になっていることに気付くと思います。そして、これが現実なのです。
特定のものに焦点を当てるとそれしか見えなくなってしまいますが、一度空に目を向けると見え方を変えることができます。